〔闘いへの船出〕

 26,27,28,29、実は不動産業という現場は そんなに甘くありませんでした。 いろんな試練が僕を襲って来ました。 大きな取引を目の前にしているのに、 中々それが漕ぎ着けない、そして裁判にまみれて行く。 そして、土地を動かすために大きなお金が要る。 様々な試練が僕を襲ってまいりました。
 しかし、若しこの世の中に創造神という 何か絶対的な人がいらっしゃるとしたら、 僕は無宗教ですけどね。 ただ、そういう、若し絶対的な存在がいらっしゃるとしたら、 お前はまだ役割があるという事で、僕を生かしてくれたんだと思います。

 27歳である女性と結婚の約束をしておりました。しかし僕は、難病の宣告を受けて、 その女性に結婚の申し入れを無期延期させて欲しいと申し入れたんです。 彼女は実は僕の高校時代の同級でして、僕が健康だった頃、やんちゃだった頃、 それを全て知っております。
 そして、僕の難病宣告も彼女にだけは逸早く伝えました。 その難病を知ってでも彼女は僕と一緒になろうと言ってくれたのです。 ところが僕は、27での結婚、これ延期しよう。 自分一人が身を立てられない様で、結婚してどうなる。お前を地獄の道連れにしても仕方が無い。 僕ははっきりと言いました。
 若し結婚できるとしたら、自分の会社が少し落ち着いて、 そして、僕は決めたんです。 そうだ、間もなく車椅子になるんだな。 26で宣告受けた時には僕はまだ何とか歩いてたんです。 ところがもう走れませんでしたし、 間もなく車椅子のなるのは分ってます。 そして、ドクター曰く、普通の車椅子も漕げなくなる。 まさかと思いましたよ。

 電動車椅子になる。 電動車椅子の簡単なあの棒のようなコントローラーも、 あの簡単なジョイスティックも操作出来なくなるかも知れない。 まさか。握力も全て失い、 寝返りも出来なくなるかも知れない。 正にドクターは名医ですね。今の僕です。

 ただ、僕は、車椅子になる前に、 自分の無くした機能を補ってくれるチームを ビジネスという現場で作ればいいんだなと思ったんです。 そこへ辿り着けるかどうか分りませんでした。 ただ、それが一つの大きな目標、過程でもありました。 幸い29歳の終わりで大きなビジネスも落ち着き、 会社も少し安定しました。 そして、その女性が僕をずっとサポートしてくれたものですから、 念願の結婚という、たった一人のレースから 二人のレースへ変わったのが30歳の春でございます。




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